8月25日の日曜日、阿佐ヶ谷「バルト」で開催された「もじもじカフェ」に参加した。

もじもじカフェ 第39回「映画字幕師・佐藤英夫の仕事とデジタル化」

「バルト」はビールが豊富なカフェで、「もじもじカフェ」はここで文字についてお話をするイベントだ。
やはり組版やフォントデザインを職業となさる参加者が多いようだ。
ward

24日にブロガーサミットで25日にもじもじカフェ。
どうしたんだ俺。
意識が高すぎだ。

ノートパソコンを忘れたのでiPad miniを使ったロギングに挑戦した。
結果的にはまあまあロギングできた。
スピーカーさんのすぐそばに陣取ったので、ノートパソコンをひらいていたら威圧感があっただろうから、かえってiPad miniでよかった気がする。

奥に大型テレビがあって、字幕が書かれた映画のシーンと、今日のお話に出てくる故・佐藤秀夫さんの美しい写真が映し出されていた。

以下、スピーカーの佐藤武さん、主催者のみちひろさん、参加者のみなさんの会話をダダ書きする。
佐藤さんのお話は「」、みちひろさんのお話は-、参加者のみなさんのお話は●■★などとする。

-今日は、映画の字幕を書かれる、「書き屋」と言われる職業で業績を残された佐藤秀雄さんについてのお話です。佐藤秀夫さんは残念なことに7月22日に逝去されましたが、40年以上に渡って、2500本以上の映画の字幕を書かれました。今日お話をくださる佐藤武さんは、半導体のお仕事をされていましたが、退職後シネマフォントを開発され、お父さんのお仕事を電子化されました。

※このお二人の記事が下のWebでも見られる
 人間と芸術

「ではまず、父が字幕を書くに至るまでの話をします。奇しくも父はぼくと一緒で、もともと電機メーカーに勤めていたそうですが、父いわく退屈になって、叔父の高瀬鎮夫(Wikipedia)さんのところで仕事をしていました。高瀬さんは映画翻訳の第一人者で、『カサブランカ』でボガートに「君の瞳に乾杯」と言わせたことで有名です」



※便宜上DVDの書影を入れる目的でアマゾンのリンクを張るが、DVD(ホームビデオ)の字幕は映画の字幕と異なるので注意。後に詳述

「当時の字幕は、アメリカのロードショー公開時に焼かれた余剰フィルムを使って行われました。余剰フィルムというのは、アメリカの映画館で上映するために、一館何本もスペアを用意して、全米で何百本というフィルムを焼きます。この、使わずに余ったものに、傷をつけて色を抜きます。」

「この字幕の技術は、中国や韓国が先行していて、日本は機械を輸入したそうです」

「そのうち、書き屋の一人が病気だか怪我だかで仕事できなくなって、ピンチヒッターで字幕の仕事を始めたそうです。最初はシャイアンという西部劇だったそうです」



「当時は1本やると20円で、4~5本やると一月暮らせたそうで、かなり実入りのいい仕事だったそうです。」

「当時の字幕は、黒紙と言う、黒いポスターカラーで着色した紙に、白いポスターカラーで筆書きしていました。上映時間1秒あたり4文字で、1行13文字、2行までと言う制限がありました」

「当時、字幕のデザインを統一化されたたかぐさんという方が、ゲージ(フィルムの大きさに対して字の位置と大きさを決める枠)を作られました。また、日本語字幕は、戸田奈津子さんなどを中心に、ストーリーを損なわずに字数を減らす『意訳』を始められました」

「横書きの字幕はセンタリングをしています。しかも、単純に字数ではなく、重さを勘案して重心でセンタリングしています。これを、父は目でやっていました。機械的にやっても微妙にズレてしまうんです」

「(ト書きや、引用を表現するために)イタリック(斜体字)の字幕もあります。シネスコやビスタのように、横長に引き伸ばされるフィルムの場合は、あらかじめ縦長に書かなければなりません。これも手で、フリーハンドでやっていました」

「字幕の書き文字はマルチサイジング(プロポーショナル)です。画数が大きい字ほど大きくなります。文字を書くというより、センテンスでバランスを取っていました」

「タイタニックが父の、書き屋としての最期の仕事になりました」



(※2013-08-29 この部分、あかねさんからツッコミをいただきました。 なお、あかねさんもこの会のレポートを書いておられます。
アキラカにそちらの方が正確で詳しいのでそちらをごらんくださいw
もじもじカフェ 映画字幕師・佐藤英夫の仕事とデジタル化 - ちくちく日記

「そこから私が、電子化を始めました。シネマフォント第一号は、ゾロという映画ですが、これは不本意な作品です」



「私が電子化を始めたのは、父が家で暇そうにしていたからです」

「映画は一週間から、早い時は4日で上げなくてはなりません。一本の映画が800枚から1000枚あります。裁判劇は1500枚だそうです。アクション映画は500枚から600枚で、楽でいいや、と言っていましたが、一枚いくらで請け負っているので、多い方が実入りは良くなります」

「そのうち、書き屋の仕事は、写植に圧されることになります」

「レンタルビデオでは、当初から写植でした。映画とホームビデオは翻訳も字幕も違います。よく、ホームビデオで洋画を見ても、雰囲気が違う、どうも調子が出ない、ということがあると思います」

「それは、翻訳も違うんですが、字が違うんです」

「字というものは、基本的にその性質上、どうしても目立とうとするんです。他の映像を押しのけてしまう。しかし字幕の字はなるべく目立たないようにする、映画の邪魔をしないで読めるべきです」

「映画にお客さんが入り込めるようにする。意味が残る。これを『字が抜ける』と言っていました」

「父は、俳優の顔が残るとうれしい、と言っていました(※注:記憶があいまいです)。あえて印象に残らない仕事をするということです」

「私は、半導体の会社で、ソフト/ハード両方やっていました。それで、写植に対抗すべく、電子化をしようと提案しました」

「父は、最初書くのを渋っていました。自分の仕事がなくなると言っていました」

「書き屋は、昔は4~5名いました。学校もあったそうです。でも父は、弟子を取りませんでした。ぼくに書き屋の仕事を教えてもくれなかった。と言うのは、俺の代で終わるから、と、昔からそう言ってました。じっさい、もう書き屋さんはいなくなっているから、先見の明があったということかもしれません」

「で、ぼくは父に、父の仕事がなくなっても、ぼくの仕事が増えれば、家全体として仕事があるんだから、写植に圧されるよりいいんじゃない、と言いました」

「最初は(父の字をサンプリングして並べればできると)カンタンに考えていました。でもやってみると大変でした。同じ字が、出現箇所によっていちいち違うんです。字が多い字幕は画数を間引く、というような制御を細かくやっていました。これを電子化に当たって、1個1個解決しました」

「たとえば『大丈夫』という言葉があると、字としては横画の高さが一字一字違います。でも、この3字が並ぶときは高さを調整して揃うようにするとか、そういうことをやっていました」

「すぐに、一人じゃ大変だということで、家族でやることになりました。妻や、母に、チェックを手伝ってもらったんです」

「1本、1週間以上掛けると写植に負けてしまう。あと、配給会社や翻訳者から訂正が出たらすぐに対応できないといけません」

「いまではIllustratorやCorel Drawがありますが、当時はありませんでした」

「いま画面に映している、字幕の横に小さな番号をがありますね。これをスクリプト番号といいます。これをキーに、FileMakerで管理しました。当初はアウトラインデータが管理できなかったので、200x200のビットマップで妥協しました」

「父の字は、手書きだから、自在にカーニングしています」

「字幕には、句読点は付けません。句点が入るところは全角、読点が入るところは半角の空白が入ります。しかし、この2つの他に、必要に応じて、極小の空白を入れる場合があるんです。親父が、特定のところに(※カタカナの後など?)『ここチョット空けてくれよ』と言うんです」

「これを、Illustratorなどでいちいち入れるのは大変ですから、極小の空白文字を作って入れています」

「後にフォントワークスさんがシネマフォントを実装してくれました」

「(出来上がったシネマフォントは)どうしても丸ゴシックに見えるんですけど、父の字と並べてみると及第点だと思います。というか、逆に『こういう風に割り切るんだ』と勉強になった点もあります」

「手書きのすごさというか、電子化の苦労話は他にもあります」

「縦書きの字幕では、濁点があると横にずれます。ここでは、手でゲージをずらして書いていました」

「縦書きのイタリックは、コンピューターでは左に降りる線が細く、右に降りる線が太くなります。でも手書きでは太さを均等にしています」

「『2013年・・・』というト書きのような字幕の数字では、縦中横を使います。これもセンテンスのセンターをずらしています」

「これらの処理はIllustratorでやっていました」

「最近は、山手線などの映像で、シネマフォントを見かけます。これがシネマフォントなんだと主張しないまでも、うれしい」

「もう10年以上、家内での字幕の作業はありません。シネマフォントを提供して、映画会社からロイヤリティをもらっています。ただCMなど単発の仕事はやることがあります」

「楽天で、さとうけやというショップを開いて、シネマフォントを販売しています」

楽天 さとうけや

「映画以外の利用であれば商用利用も可能なので、よろしければごらんください」

(以下Q&Aタイム)

-映画『大統領の陰謀』では、壁が白い室内でのシーンが延々続くので、字幕が見えにくかった記憶がある



「色を抜くので、白いバックでは見にくいので、なんとか黒い部分に字をずらしていました。今は影(ドロップシャドウ)を入れています」

-秀夫さんの手書きのノウハウは失われてしまうんでしょうか

「おっしゃるとおりだと思います」

-「印象に残らない仕事」と言う話があったが、逆に字幕の字は個性的だとも思う

「たとえば平仮名の『う』は、ずいぶんくるっと丸くしています。普通に細く書くと『る』、『ら』と見間違えるからです。誤読をしないように、速読しやすいように字によって特徴をつけている」

-なぜ字の隅が切れているのか

さとうけや シネマフォント
※「詳細説明①」を参照

「シネマフォントには2種類あります。

1種類は焼き込みというもので、ネガフィルムに字幕を入れるときに使います。
これは光学的に字を焼きこんでいる。

もう1種類はパチパチというもので、ポジフィルムから色素を抜くときに使います。
この工程は、まず、字を元にエッチングで銅や、現場でジンクと言われる亜鉛とアルミの合金を腐食処理して凸版のハンコを作ります。
このハンコで、フィルムの色素層に傷をつける(へこみをつける)んです。
1秒間表示する場合は、28コマに同じ傷をつけます。
このときパチパチ音が言うからパチパチと言っていました。

で、字の端が切れているのは、パチパチのみです。
これは、道路の字が雨水を排出するために切れているのと同様の理由があります。

エッチング処理のとき、四角く塞いでしまうと、酸の逃げ道がなくなります。
よって、国という字が、中がごっそり抜けてしまって、(■のような)四角になってしまうんです。

じゃあ『す』や『む』の小さな丸はどうかと言うと、父は「まん丸の丸はちゃんと(字画だけ)抜けるんだよ」と言っていました。どうもここが納得いかないんですが」

-翻訳者とケンカにはならないですか

「ならないです。翻訳者の方が力関係的に上だし、父は営業センスがあるので、ケンカということは家の中でも外でも、まったくしない人でした。ただ、試写室で『こうするといいですよ』というサジェスチョンはしていました。基本、書き屋はケンカしません」

「ただ、父は晩年は日本アカデミー賞の審査員をやっていたりしていました」

-現在の映画は、手書き時代のような微調整はしていないんですか

「手書き時代ほどではないが、やややっているようです。シネマフォントとしては、異字形を何種類か入れていますが、どこまで配慮して使い分けているかは、分かりません」

-一般のフォント技術者の方に伺いたいんですが、字の組み合わせによって字形を自動的に切り替えるような技術は可能でしょうか

●fiがくっつくリガチャーのようなことですね

■手間を掛ければ出来ると思います

★かなバンクでは、「フィンガー」というフォントで、OpenTypeの機能を使って、上の字に応じて下の字を変えるようなことはしています。現状、仮名だけです

株式会社タイプバンク「かなバンク」

▼あとはGSUBを使うこともできると思います。技術的には可能だと思いますが、漢字までやると、コスト面、回収できるかの問題になると思います

「(技術の進歩といえば)たとえば、縦のカーニングというのが、最近できるようになりました。昔は出来なかったので、拗音は、空いちゃってました。これを、あきらめるか、Illustratorでやるか・・・そこまでやっても、気づいてもらえるか?いや、字幕は目立っちゃいけないから、気づいてくれなくていいんですけど・・・(会場 笑)」

「写植時代は、投書で良く映画会社にクレームがあったそうです」

-もし、OpenTypeの技術を使って字を変化させるとして、どっかがお金を大量に出したとして、字の組み合わせはどれぐらいあるんですか

「考えたことないですね・・・」

「父は、映画一本が800枚として、ロットリングペンを使っていましたが、映画一本書くごとに、一本新しいのを下ろしていました。逆に、途中で新しいのに変えることもしませんでした。というのは、ペンを使っていると微妙に線が太くなります。途中でペンが変わると、線が急に細くなるので、それもまずいわけです」

「父は、仕事で使う右腕では腕相撲はしませんでした。途中で怪我をすると字が変わるので。右腕で本気の勝負をしようと言っても『この手で儲けてるんだよ』と言って、聞いてくれませんでした」

「父は、自分の字の他に、他の書き屋の真似も出来ました。もともとピンチヒッターで仕事をはじめたので」

-原稿は残ってますか

「残ってないと思います・・・。シネマフォントの元の字は、探せば出てくると思います。これは、カンタンに言うと漢字ドリルのようなものを、8往復書いてもらいました」

●今日、字幕の原稿を人からいただいたものを持ってきたんですが、字をみたら佐藤秀夫さんのものかわかりますか

-見せてください。「なんでも鑑定団」みたいですね

「これは、日本のものですね(『地獄先生ぬ~べ~』ですね)」

■日本映画の字幕ってあるんですか?

「視聴覚用だと思います。ろうあ者の方が使われる字幕で、電話が鳴るシーンに絵文字の電話マークが出るのは、あれは父のアイディアです」

「ううん、これは、父っぽいような気もするけど、『わおおおおー』という『お』の字が揃ってないので、父じゃない気がします。父の流派だとは思うんですけど、オリジナルの字体も入ってますね」
jimaku

「もともと日本の字幕は、オオイマコトさんという方がデザインして、タカグさんという方が統一化します。その後いくつかの流れに分かれたんですが、父はその一番後輩になります。父自身は弟子は取らなかったのですが、父の先輩の弟子の一人ではあると思います」

「父の字体を、ぼくがシネマフォントで変えたものもあります。『女』という字の、右の払いは、父は膨らませずに書いていましたが、後になってぼくに『やっぱり、オンナって字は変えないか』と言ってきました」

●書き屋以前の字幕はどうだったんですか

「もともとトーキー映画が少なくて、弁士が説明してました。その後のサイレント映画は、字幕をまるまる一枚フリップで出していました」



「現在のような字幕は、高瀬さん以前はないに等しいと思います」

●縦書きと横書きの比率は

「昔は圧倒的に縦書きでした。今はほとんど横書きです。懐古的な効果として字幕を使う場合は縦書きの場合はあります」

「例外が挿入歌の翻訳で、エンドロールにカブると邪魔なので縦書きにします」

「あと、セリフが食い合うような激しい言い合いは縦書きにして、左右に振り分けます」

「そういう意味では、交ぜてると言えます。テレビのバラエティでは色分けしていますね」

●中央揃えの意味は

「左揃えだと硬い気がします。文章(手紙がパンして翻訳を出すような場合)はわざと左寄せにする場合があります」

「父は韓国語や中国語の字幕も、言葉は分からないけどやっていました。そのときは左合わせにしていました」

-改行の位置は原稿からですか

「そうです」

「シネマフォントは数字や『う』『ら』は細くなっています」

「DVDで、ビットマップ版のシネマフォントを採用しているものがあって、『シネマフォント採用!』とシールが貼っているそうです。ただ、翻訳が違うので、劇場版そのままということはありません。あとDVDは740x400で画質が粗いので、大きくするとジャギーが入るので手書きっぽく見えません。質の悪いプロジェクターで見るのがおすすめです(笑)」

●逆に、HDでは足りなくなるんじゃないですか

「ビットマップ版では足りなくなりますね」

「ゲームでは動的にシネマフォントを使って文字を表示するものがあります」

「電車の車内の動画ではシネマフォントを使っていますが、同時に貼ってあるポスターの方は字幕っぽいフリーフォントだったりして、あれは雰囲気を求めて誇張しています」

●シネキャプションですね

「そうです。あれは有志が作ったフリーフォントで、素人がやったにしてはうまいと思います」

「あの字幕の字に思い入れがあるのは日本だけですね。われわれに刷り込まれています」

●縦から横に変わったのはいつですか

「30年前とかでしょうか」

「シネマフォントに縦書きフォントはありません。等幅で対応しています」

●秀夫さんの普段の字はどうでしたか

「汚かったです。金にならない字は汚いって言ってました(笑)」

-でもどうでしょう、フォントデザイナーの方って字がきれいなものでしょうか?

■私は普段は丸文字ですが、之繞は妙にちゃんと書いちゃう、職業病だと思います(笑)

●映画を見ていると、アメリカ映画で登場人物のフランス人がしゃべっているとか、卑猥な略語にルビが振ってあるとか、人の言葉を引用しているとか、いろいろなケースを実にうまく書き分けていると感じます。こういう場合の、字幕の文法のようなものはあるのでしょうか。





「最近の若者の用字法などは、アンテナを張ってないと分からないから難しいですね。よく聞き取れない言葉を※★▲~?のように表記しますが、そういう翻訳原稿を見て、『オイ武、この原稿文字化けしてねえか』と言われたことがあります(笑)」

「画面に映っている人が言っていないセリフはイタリックにします。電話で、話してる向こうの声などです」

「引用句や、特に違う意味を持たせる場合は傍点を使います」

「あと特徴的なのは、1.5倍の長音、継続棒というやつです。長いセリフが一枚の字幕に入らないとき、末尾に入ります」

(※あの曲をやれよ サム──
  もういちどやってくれよ

 的な)

「この現象が起こるのは、戸田奈津子さんより前の、意訳が洗練されていない時代のものだと思います。戸田さんが出てきて、詩的な、英語と少し離れた表現が出てきました」

-戸田さんの字幕が嫌いだって方はいらっしゃいますか

●「~かもだ」とか、変な日本語がたまに気になりますね

-それは翻訳側だけど、ありますね、字幕の文法。私は週刊誌の見出しの文法が気になります。「3億円投入も失敗」みたいな

●イタリックは翻訳者の指示ですか

「そうです。イタとか書いてます。縦書きでイタリックなら、タテイタって書いてます」

「嘘字もあります。『轟』って字が、(※スケブに書いて)こういう字(『車』の下棒が取れて下端が『山』になった字)になったりします。でもこれはパチパチだけです」

(※2013-08-29 補遺。スミマセン、ここ、聞き間違えた可能性大です。
「『車』の下棒が取れて下端が『山』になった字」は攻撃の撃の略字だと思います。
おそらく「轟くって言う字が略字になったりするんですけど、たとえば攻撃の撃は・・・」とおっしゃっていたのを聞き間違えたんだと思います。
@koikekaisho さん、@2SC1815J さん、ご指摘ありがとうございます。
@2SC1815J さんには用例も示していただきました。
レファレンスコード:C08030770300

この字については清水俊二さんも『映画字幕の作り方』と言う本で、「常用漢字にない略字も使います」の項で「私も”撃”を”■"と書いている」と書かれています)


清水俊二さんといえば私が大好きな『緊急の場合は』を訳された方で

そういえば「理くつに合わないと思うのだ」という交ぜ書きが気になったのを覚えています。)

「パチパチはどうしてもウエイトが大きくなります。『業』(なりわい)とか、『三鷹』(みたか)の『鷹』とか、絶対つぶれます。だから嘘字にしてました」

「でも、文脈の中で読めば、読めちゃうんですね。ただ、学校の先生からウソの字を書くなって投書が来るんです(笑)」

●写植で、映画っぽい字ができなかったのか

「大きな会社に売り込みに言っても、需要が見えないと断られたこともあります。それで、あきらめていたんですが、フォントワークスさんの方から話がありました」

「その前は、ぼくが写植を使って字幕を作ったこともあります。Dナールの、丸ゴシックを使ってました」

●字を入れられるアクセサリーショップがあって、フォントをオプションで選べるんだけど、明らかに新篆体的な字を使ってるのに、『シネマ』っていう選択肢になってたから、一般の認識的にはあれが字幕風ってことなんでしょうかねー

などなど。

ものすごく面白くて、ためになり、感動的だった。

佐藤さんの話で特にぼくが感銘を受けたのは、家族愛である。
父の失われた技術を、電子化して残し、さらに発展させる。
こういう暖かい技術、優しいプロフェッショナリズムのあり方があるんだなあと、新鮮な感動を覚えた。

そして、自分の親父の、店舗装飾作業のセロハン加工技術という、失われた技術のことを思い出した。
ぼくはまったく美術の素養がないし、旅から旅へパチンコ屋のガラスにセロハンで絵を描く父の仕事は大変さしか見えていなかったので、父の仕事を継ぐとか、さらにデジタル化して発展させるという考えはまったくなかった。

ぶたときどき真珠~深沢千尋のブログ~ セロハン加工

さいきん妙に凝って文字系のセミナーに参加していたが、今回は特にしみじみと心に響くセミナーで、勉強になった。
技術と実際、実用と芸術の交わるところを見て、ぼくのようにバックグラウンドがない人間でも心から楽しめた。
こういうセミナーをもっと見たいし、自分が何かを伝えるときの参考にもしようと思ったのである。
もじもじカフェは是非今後も参加したい。