誰でも言うことだが、時代の記録としてぼくも書いておこう。

写真(2)
3月15日に東横線が副都心線と接続し、東横線渋谷駅が地下化した。

旧・東横線渋谷駅はモダニズム建築が楽しい駅であった。
完全なる終着、始発駅であって、渋谷のド真ん中に、レールの端っこがどうだ!とばかりに4本敷いてある。
ホームが8面あったのも、今思えばよかった。
昔は五島プラネタリウムがあった東急文化会館と接続しているのも楽しいし、空飛ぶ地下鉄銀座線がさらにその上の階でビルに突き刺さるのも楽しかった。

それが地下5階に移動し、副都心線と接続した。

接続しても別にうれしくない。
この副都心線というのが微妙に使いにくいのだ。
新宿三丁目、東新宿にまで行くのに、新宿には行ってくれない。
北参道とか、西早稲田とか、どこそれ?という中途半端なところばっかり止まる。
そして和光市、森林公園である。
今のところ行きたいと思ったことはない。

これは和光市、森林公園の人も一緒ではないだろうか。
最近は「東横線で行きやすくなった横浜!」などと言って、中華街、石川町などの特集をテレビでやっているが、完全なステマであって、中華街なんか横浜の人は全然行かない。

百歩譲って和光市、森林公園の人が中華街に来て肉まんを食べたり、石川町で高級店を冷やかして回るのに便利になったとしよう。
年に何回そんなことしますか。
一生に1回行けばもう十分じゃないだろうか。
みなとみらいはそこまで魅力がない。
東京ディズニーリゾートのようなリピーター、マニアは来ないだろう。

で、一生に1回か2回そういうことがしたくなるんだったら、都心で乗り換えればいいのではないだろうか。

和光市から横浜に行く人、横浜から和光市に行く人は「変わったイベントがある人」だ。
「変わったイベントがある人」が、ごくたまに観光をするために、わざわざ電車を直通にする利益はないと思う。

逆に弊害はある。
電車の線が伸びると遅延が増えるのである。
和光市のOLがスカートをドアに挟むと、遅延はみなとみらい線まで響く。
横浜市で人身事故があったら、遅延は副都心線まで響くのである。
普通は郊外から都心まで行けばいい。
郊外から東京を突っ切って郊外まで行く「変わったイベントがある人」は乗り換えればいい。
「変わったイベントがある人」のために、巨大な工事をして、毎朝毎朝遅延が増える。
そのたびに混雑がひどくなる。

工事を決定する人は、ハイヤー通勤でハンコ押したり会議で寿司食ったりしてるだけだろうから、混雑がどんなにひどくなろうが全然影響がない。
悲惨なのはローマの奴隷船のような満員電車に毎朝乗らなければならないシャチクのみなさんである。

振り返れば、みなとみらい線が出来たときも本当に腹が立った。
歴史ある飲食街の高島町、桜木町に行けなくなってしまったのだ。
このあたりこそ映画「天国と地獄」に出ていたような古き良きヤバい横浜であって、今も雰囲気のある飲食店が並んでいる。
桜木町の西側の野毛などは、一大歓楽地であったが、凋落の一途をたどっている。

しかもみなとみらい線は別会社、第3セクターの横浜高速鉄道だ。
これまで東横線一本で桜木町まで来ていたのに、みなとみらいに行きたければ横浜で改めて180円の初乗り料金を横浜で払わなければいけない。
これは凶悪だ。

みなとみらいの開発はいつまでも手が付かなかった。
草むらが延々と広がっていて、秋には虫の声が怖いほど響いていた。
あまりにも土地が余っているのでフットサルコートなどがあったのである。
古い高島町や、桜木町の周りが凋落の一途をたどり、草ぼうぼうの地面にランドマークタワーがポツンと佇立しているみなとみらいに行くために初乗り料金180円。

要するに日本人は工事がしたいだけなのだ。
ああいう工事を決める人は、しょせんハイヤー通勤でハンコ押しているだけであって、電車なんかどうなろうと知ったことではない。
土建屋が潤って、天下り先が増えればいいのである。
通俗的なことを書いているが、世の中が通俗的だからしょうがあるまい。

最近はみなとみらいの再開発も始まった。
渋谷にも「ヒカリエ」が出来た。
ああいう新しいビルが見事につまらないのである。
所詮大資本のチェーン店である。
あとは狂ったように婦人服の店があるだけ。
これは首都圏を離れて、地方に行っても一緒である。
ああいうビルやモールは家賃が高いから、大資本のチェーン店しか入らない。
どこに行っても同じ店。

さて新東横線渋谷駅である。
この駅は本当に凶悪である。
東横線は地下5階、山手線は地上2階だ。
350メートル歩かなければいけない。
副都心線に乗ってくださいということだろうか。
だったら新宿に止めろよ!

高低差だけではなく、エスカレーターが狭く、少ない。
安藤忠雄氏が設計した地下船をイメージしたという「巨大な円形の空間」がジャマでジャマでしょうがない。
あのために動線がメチャクチャになっている。

さらにホームが狭い。
新しい駅なのにホームが狭くなるってどういうこと?
明らかに危険である。

渋谷駅の利用者は5%減ったそうだ。
5%ってすごくないですか。
つまり使いにくくすることに成功した、ということだろう。

行きやすくなったのはヒカリエだけである。
お買い物のビルなんてそんなに行きたいものですか。
結局通勤者、通学者、生活者を犠牲にして観光客、遊びの客を優先している。
みなとみらいやサンシャインと一緒である。
でも遊びの客だって、そんなにしょっちゅう決まりきった店の入った商業ビルなんかに行きたいものだろうか?
つまり、正確に言うと工事を優先させた、再開発の利権を優先させたということだろう。
百歩譲って工事ぐらいしてくれてもいいとしよう。
旧渋谷駅もあのままだと新しい建築基準法に照らして違法建築だったそうだから、いつか新しく建て替えるべきだった。
しかし、新しく建て替えるのに、なぜわざわざ使いにくくする必要があるか?

安藤忠雄氏の芸術的な感性を満足させる巨大な円形の空間を作るために、そしてヒカリエを繁盛させるために、地下5階までホームを移動し、ホームの広さを削減し、エスカレーターを削減してシャチクを右往左往させ、大量の警備員がのべつ怒号を発している駅にする必要があったのだろうか。

計画した人は、ハイヤーを降りて、1回ラッシュアワーに新しい渋谷駅で降りて欲しい。
安藤忠雄氏も降りてみるべきだ。
降りて、歩きやすいか、駅にいて楽しいか、これが本当に求められている駅なのか、虚心で考えてみればよかろう。

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