連載の第11回。
今回はアルバム『プロセッション』を紹介する。

前作『Weather Report』を最後に、大スターだったジャコと、ピーター・アースキンが去った。
しかし、バンドは元気をなくすどころか、一層パワフルなアルバムを作った。

前作は当時の世相に合わせたのか、ジャズをやりたいというピーターの希望に配慮したのか、かなりジャズに擦り寄った内容で、また、メンバーチェンジ前のあわただしさを感じるセッション的な内容だった。
しかし、本作はよりロック的な、クライマックスに向かって突き進む音楽になっている。
そして、一層ザヴィヌルのソロ的な色彩が強くなっている。

メンバーにはベースにヴィクター・ベイリーが、ドラムにオマー・ハキムが迎えられた。

ヴィクターはソニー・ロリンズや渡辺貞夫のバンドにも参加していたが、ここではジャコに似せたフレーズを器用に弾いて成功している。

そしてドラムに怪物オマー・ハキムを迎えた。

M1「プロセッション」は、さすがはウェザー・リポート、プロのセッションだ・・・という意味ではなく「行進」のような意味だ。
これはキリストの受難を模した輿を持って練り歩く儀式のことで、アルバムのジャケットもウェザーのメンバーがオープンカーでパレードする様子になっている。
曲はファンキーなマーチという趣の曲で、強迫的に盛り上がる。

ザヴィヌルはこの曲でのオマーのプレイに大変感銘を受け、そのすべてを楽譜に書き写したそうだ。
気難しいザヴィヌルが、若いオマーの才能をこのように評価するところは、根っからの音楽人間という感じで好ましい。

M2「プラザ・レアル」はショーター作のエキゾティックな曲だ。
主旋律はパーカッションのホセ・ロッシーが弾くコンサルティーナ(イギリスで発明された八角形のアコーディオン)であるが、途中からザヴィヌルが引くアコーディオン(シンセ?)の音になる。
オーストリア出身で、ジプシーの血も引くザヴィヌルのルーツを感じさせる演奏だ。
ショーターの口笛も楽しい。
ただ、こういう「夜の」雰囲気の曲は、もはやジャズバンドの域を超えたウェザーの音楽としては少し古めかしい感じがする。

M3「Two Lines」はウェザーの曲の中でも最も疾走感があり、スイングする曲だ。
ぼくはこの曲と、マイルスの「What you'd say」、プリンスの「Beautiful Night」を世界3大ノリノリ音楽と呼んでいるのだが、本当に体に悪いほどノリまくる。
ただ、あまりメロディアスではなく、ぼくはこの曲の良さ、楽しさが、ある程度ジャズを聴き込むまで分からなかった。

M4「Where Moon Goes」が、最もザヴィヌルの新境地を現している。
M1と並んでアドリブがほとんどなく、ロック的に盛り上がる。
ヴォーカルはマンハッタン・トランスファーによるものだが、声にマシーンが掛けられていてあまり掛け合いやハモりはない。

ブログの本シリーズは、なぜかウェザーのアルバムを年代順に1枚ずつもっともらしく解説しているが、実は一番最初にウェザーの音楽に衝撃を受けたのはこのアルバムの、4曲目「Where the moon goes」、それも「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」のライブ映像だ。



この曲は「歌えるドラマー」であるオマーと、ザヴィヌル自身が、ヴォコーダーでヴォーカルを担当している。中間のドラムとザヴィヌルのバトルがものすごく楽しい。

この演奏をぼくはNHKテレビで、生で見ていた。
中学生だったのだが、当時はまだドラムというものの良さ、存在理由がよく分からなかった。
しかしこのド派手なドラムソロを見て、すっかり魅了されてしまった。

ちなみにベースの意味がわかったのは、マイルスの項でも書いたが、チャカ・カーンの『C.K.』の「I will be around」のマーカス・ミラーのプレイを聴いてからである。



M5「The Well」は、ショーターとザヴィヌルのデュオ。ライブでのインプロヴィゼーションを編集したものだ。非常に美しい音だが、やはりあまり曲として計算されたものとは言いがたい。
この頃ショーターは、ザヴィヌルの作曲に時間が掛かるとこぼしていたそうで、この頃ショーターとザヴィヌルの関係はあまり芳しくなかったのではなかろうか。

M6「モラセス・ラン」はオマーの曲で、なんとメロディはオマーが単音のギターを爪弾いている。
これもサラッとした印象の曲で、あまり印象に残らない。

ということでぼくは、ザヴィヌル主導のM1、3、4の強烈なパワーと、それ以外の曲との乖離を感じる。
まだザヴィヌル完全独裁体制と、ジャズから離れようというその意向に、バンドが戸惑っているような印象を受ける。
しかし、ハイテンションなM1、3、4は本当に中毒的に好きだ。
これらの作品を聴いて、完全にザヴィヌル・ジャンキーになったのである。

ちなみに本作でウェザーはコロンビアを離れたので、本作以降はボックス・セットには入っていない。

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